この季節、メディアでは戦争に関するものが数多く取り上げられる。
祖父のことを思い出した。
子供の頃、京都の祖父の家で軍人だった頃の写真を見せてもらったことがある。
たしか、胸にはバッジが幾つかついていた。
馬に乗った写真もあった。
でも、おじいちゃんは「戦争」についてのお話はしてくれなかった。
大きくなって母とそのことについて話をしたことがある。
母も「おじいちゃんは戦争について一言も話をしたことがなかった」と。
恐らく、思い出したくない体験を沢山したんだろう・・・と。
もう何年も前の話だけれど、入院していた祖父がもう危ないと連絡を受け、
仕事を投げ出して車を走らせ会いに行った。
モルヒネで意識が朦朧としている祖父は、殆ど動くこともなく
私が来ていることがわかっているのかどうかも、判断できない程だった。
小さな声で、私は歌を歌った。
そして、「おじいちゃん、また来るで」
と言って椅子から立ち上がるとおじいちゃんの手が動いた。
その手は額まで動き、かすかに「敬礼」をした。
その数日後、おじいちゃんは息を引き取った。
あの時、おじいちゃんには何が見えていたんだろう。
今でもあの「敬礼」は忘れられない。
「硫黄島からの手紙」を放映している。
目を背けず観てみようと思ったけれど、具合が悪くなってきた。
同じ人間だととても思えない。
でも、これが、おじいちゃんの生きた時代なんだ。
私の母が生まれるほんのちょっと前の出来事なんだ。
戦争は、しない。
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